消費市場としての東南アジアで必要なSCM

Publish: : 日本語 / Japanese

成長市場に合わせた販売プラットフォームとしてのSCM

製造拠点としてのベトナム(東南アジア)から、消費市場としてのベトナム(東南アジア)へ。
ここはホットスポットであり、冒頭で述べたとおり、日本企業のノウハウが足りない部分である。これのドメインは、中規模以下の小売業や、通信販売、Eコマース。製造業であったとしても、もし直販に乗り出せば同じだろう。

では、少なくともベトナムは、日本と同じようなサービスを提供するだけのSCM的なインフラストラクチャがあるだろうか?
答えは、NOだ。日本と比べてはるかに貧弱であり、進んでいる/劣っているという観点で見るべきではないにせよ、少なくとも違う様態であり、日本とは違う戦略が必要になる。しかし、うまい戦略をとることができれば、一気に成長の波に乗れるとも言える。

流通暗黒大陸?

かつて日本の流通業界は、アメリカ企業から、(彼らに言わせるところの)複雑で不透明なな商慣習や系列ゆえに「暗黒大陸」と言われた。
異文化に対する偏見をそのまま持ち込んで、日本がベトナムに同じように思うことはあるようだ。
その典型例がリベートである。チップや謝礼という意味で合理化できるレベルから、背任や汚職というべきレベルまで、多彩なリベートの事例にあふれている。これへの評価は差し控えるが、現存していることは確かで、それゆえに、「コンサルタント」や「仲介者」に依存することになってしまう。これの良し悪しはともかく、コンピュータ処理という意味でのSCMに向かない。仕入れ担当者にリベートや利権が紐付いているのならば、どうやってコンビニやスーパーのような棚の売れ筋管理ができるというのか。

また、少なくともベトナムにおいては、インフラとしてのパブリックな流通システムは貧弱である。
例えば、筆者は一週間前に、ホーチミン市内の郵便局から市内の自宅あてに葉書を投函したが、いまだに到着していない。
ヤマト運輸や佐川急便のような全国的に均質なサービスを提供する宅配便は存在していないし、まして彼らに料金引き換えの代金回収サービスなど頼みようがない。

クレジットカードは普及していない。消費者の決済は現金である。それはよいのだが、その精算はかなりざっくりとしている。
筆者にとって鮮烈な事例がある。ベトナムドンは日本円と同じくお金の桁数が大きく、数十万ドンという数字が日常生活で普通に出てくる。Wikipediaによれば最小額の貨幣は100ドン紙幣だそうだが、そんなものは見たことがなく、日常生活では500ドン紙幣が最小額貨幣である。しかし、レジ完備のスーパーにおいては、商品の値段が100ドン単位でついている。レジでの合計金額が9,300ドンとかになったとして、支払いをどうするのか?
答え。丸める。切り上げが多いようだ。上記だと、10,000ドン紙幣を出したら、500ドンのお釣りを返されて、それでおしまいである。(500ドン紙幣が返ってくるのはPOSのあるようなスーパーだから。それ以外だと、500ドンも返ってこない。)
別に200ドンが惜しいとか悔しいとか言っているのではないのだが、IT屋としてはこのPOSはどうやって処理しているのだろうかと思う。計算結果と機械の中の現金が一致することを期待するからこそPOSを導入するのであって、トランザクションごとに数百ドンの誤差が出るというのでは、いったいどうやって処理をすればよいのか。
処理の問題というよりも、より本質的な問題は、これは現場の裁量権を過剰にしてしまうことである。小額紙幣がないのだから、客も納得する範囲で適当に精算額を丸めるというのは、現実的な処理であり、それ自体は悪いこととはいえない。ただ、結果的に現場の裁量という形で人間を間に挟んでしまう。これはリベートと同じで、システム処理に向かないのである。

自力救済の世界

できない理由を数え上げ、「これだからベトナムは・・・」というのは簡単だが、それではチャンスを逃してしまう。
見方を変えれば、誰もが簡単にできないということは参入障壁があるということであり、そこを突破する戦略を独自に構築してしまえば、ブルーオーシャンということになる。

ロッテマートの無料配達

冒頭で、日本が20年間中国にかまけていた間隙を埋めたのは韓国企業だと述べたが、その典型例のロッテマートの事例を見てみよう。

Lotte Mart's delivery service

Lotte Mart’s delivery service

見ての通りである。以前の記事でホーチミンはバイク社会だと述べたが、そのバイクを使い、独自の配送システムを作ってしまった。20万ドンというと、日本のスーパーで言うと、3000円ぐらいの買い物をする感覚と言って良いと思う。また、バイクで10kmは時間でいえば30分ぐらい。「コンビニよりもちょっと大きな買い物」のニーズをちゃんと捉えている。

長距離バスによる「チッキ」

ホーチミン市は大都市で、とくに独身の若い住民は、ホーチミン市生まれではなくて、南ベトナム各地から「上京」している人が多い(一人暮らしではなくて、兄弟など家族で住んでいる人が多いようだ。)
科学的な定量調査をした結果ではなくて、筆者の身近な数例からの報告で申し訳ないのだが、「田舎」から食材を送ってもらっているケースがいくつかあった。

日本でも、大学進学などで「上京」して「田舎」から米や野菜や地方独特の食材などを仕送りしてもらったという人は多いだろうが、同じことはベトナムでもやっていた。
それをしている理由は、たぶん日本と同じで、「都会の食べ物は危険で地元の食べ物は安心」だからであり、遠くはなれて住む家族に対する愛情であろう。さだまさしの「案山子」に、国の違いはないように思う。

問題は宅配便がない社会でこれをどうやって実現しているかであるが、長距離バスに託すらしい。差出人は荷物を持ってバスターミナルに行ってバスに預け、受取人はバスターミナルに行く。これは、一昔前に日本の国鉄がやっていた「チッキ」である。
需要のあるところ、なんからの供給があるといういい例である。

群雄割拠

流通で顧客にValueを提供するには、ロッテマートのように、自分で工夫をして自力で「システム」を構築しなければならない。
それに成功したところは、市場のリーダーになれるし、その余地はまだある。小売の覇者、宅配の覇者、頒布の覇者というように、業界ごとに寡占になるだろう。そして、ベトナムのようなSCMの状況の国は珍しくはないのだから、ここでノウハウを積んだ会社が、東南アジア統合の果実を掴み、さらに東南アジア以外の世界へと雄飛することになる。戦国時代と同じだ。

それのためには、ロッテマートが半径10kmの地域にバイク配達をしているように、地域の現状に合わせるという方が有効だと思う。ベトナムではバイクによる配達が「地域の現状」に合っている。そしてそれは、国によって違うはずだ。
巨大配送センターを作って、全国一律のUniversal Serviceを低コストで提供するというよりも、その国その国のValueはなんなのかを、実証的につかむという方が、大切であるように思う。

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