ベトナムでフランチャイズビジネスは成功するか?

Publish: : 日本語 / Japanese

外資も含めたチェーン店が多いベトナムであるが、その政策の背景は骨太だと思う。その政策意図を読み取りつつ、将来のフランチャイズビジネスの可能性について、消費サイドと運営サイドから、どのような課題があるのか検討する。

昔も今もベトナムはタフな戦場

溢れかえる外国ブランド

In Aeon Mall at the suburban area of Ho Chi Minh City.

In Aeon Mall at the suburban area of Ho Chi Minh City.

ベトナムはいちおう社会主義国のはずである。そしてベトナム戦争をはじめ、独立のために長く闘ってきた。それだけに、この国に来た旅行者は誰しも、スターバックス、ロッテリア、KFCなど、外国資本のチェーン店が多いことに驚く。このブログでも紹介したが、つい先日マクドナルドも進出した。もしあなたが外国で飲食や小売のチェーン店を運営しているのなら、この国の経済成長や人口の多さや消費の活発さに期待し、ベトナムに進出してみようという気になるかもしれない。

しかし、話を聞いてみるとネガティブな事例が多いことにも戸惑うはずだ。たとえば日系コンビニエンスストアのファミリーマートは地元資本に乗っ取られた。韓国のロッテマートは、2号店を出した翌日に当局により閉店に追い込まれた。

資本が産んだ利益を国内に残す政策

外資がこの国に進出する場合、製造業は規制が少ないようだが、サービス業はいろいろ難しい。1階に店舗を出してはいけないとか、2号店からは出店規制がかかるなど、嫌がらせとしか言いようのない規制が存在する。しかもそれが現場の裁量権の大きさと不明瞭さにも影響される。ロッテマートはこのケースである。

合弁企業にすると、規制は緩和されるが、外国人と所有権をシェアするということは、文化や商習慣の違いという別の文脈の問題を抱え込むことになる。とくにトラブルになったときに、アウェイで戦う外国人の立場は弱い。ファミリーマートはこのケースだ。

どうしてこうなるのだろうか。 以下は筆者の主観的な意見である。

ベトナム政府は外資100%を好まないのではないかと思っている。資本が生んだ利益を外国に持ち去られたくない。ふだんの取引で生じる利益、すなわちフローの利益は仕方ないにしても、ストックが生み出した利益は、本質的にこの国の国土や人民が生み出したものであるのだから、この国に還元され、この国の中に残るべきものである、とそのように考えているように思える。やはり背骨のところは社会主義国であり、独立が国是なのだと、私は思う。

このような方針は是か非か。これも筆者の主観的な意見だが、是だと思う。世界のあらゆる場所で資本は好きなように商活動を行い、そこであがった利益はいつでもどこでもどのような形にでも変えられるものだ(べきである)という世界観は、間違っているとは言わないにせよ、極論だと思うし、時代遅れであるとも思う。

ベトナムは外国の植民地ではないのだから、原材料や労働力を原価で提供しなければならない理由はない。外国企業が自国で商売をするのは良いとしても、利益は国内に残し、国内企業と取引させ、付加価値の高い運営ノウハウを国民に移転させるように政策誘導するのはあたりまえのことであり、国民を代表する政府がそのようなものでなかったら困る。

ファミリーマートやロッテリアのように、現場レベルでは、政策のこなれていないことや無茶なことも多いだろうが、ベトナム政府の方針は大筋では間違っていないと私は思うし、外国企業は、その「大筋」に沿った形でビジネスモデルのデザインをするべきだと私は思う。

FC in Vietnam

そういったビジネスモデルのデザインの一類型が、フランチャイズだ.

フランチャイズはセントラルキッチンからの仕入れなど、フローの経済活動による利益は本部のものである。そして、資本の所有者はフランチャイズの加盟者(フランチャイジー)であり、ブランドやマニュアル化など、運営ノウハウを共有しているとも言える。

もっとも、フランチャイズと言っても千差万別であり、名ばかりオーナーを搾取するための仕組みとしか言いようのないものや、ただの統一ブランドにすぎないものなど、いろいろあるので、「フランチャイズとフランチャイジーは共存共栄するものである」というのは原則論であるとは思うが、ここではあくまで、ビジネスのひとつのデザインパターンとして捉える。

「原則論は掲げながらも現場の対応は柔軟である」ことに定評のあるベトナム政府も、フランチャイズビジネスは取り入れようとしているようだ。
ベトナム商工省と近畿経済産業局は、2013年に日本全国でフランチャイズセミナーを共催した。ベトナム商工省アジア太平洋市場副局長が講演をしている。

「ベトナム流通・フランチャイズセミナー」を開催しました。(経済産業省 近畿経済産業局) http://www.kansai.meti.go.jp/2kokuji/glocal_PT/vietnam/vietnamseminar2013.html

しかし、冒頭であげた外国ブランドの店を見てみると、直営店が多いようだ。フランチャイズではないらしい。 その理由は不明だが、識者にコメントを求めると、

  • フランチャイズ展開をするまでもなく直営したほうがコストが低い
  • 直営しなかった場合のブランド低下のリスクを考えると、まるごと自前で抱えてしまった方がいい

からではないかと推測していた。 そうだとすれば、ベトナム政府は直営店の次の段階として、フランチャイズへの「高度化」を狙っているのかもしれない。

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