ベトナムにおけるクラウドソーシング(2) ベトナム人とクラウドソーシング
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ベトナムのクラウドソーシング事情調査の第2回。ベトナムのクラウドソーシング・プラットフォームについて調べる前に、アメリカのoDeskでフリーランサーをやっているベトナム人について調べてみる。
世界最大のクラウドソーシング・プラットフォーム oDESK
クラウドソーシングは、居住地の制約を受けにくいことが、本来的な特長だ。
インターネット越しに仕事の受発注をするのだから、発注者と受注者が地球半周分離れていても構わない。
これは、世界価格で見た時の物価の安いベトナムに住んでいる者とすれば、大きな利点となる。もし私がベトナム人なら、こう考える。
「米国と同じ報酬で働いて、ベトナムで生活したい。」
これが米国社会にとってもベトナム社会にとっても良いことなのかどうかはさておき、実際にやっている人はいるのだろうか。
また、クラウドソーシング・プラットフォームは、市場でもある。市場は一番大きな規模のものだけが生き残る。Winner takes all.である。世界最大の(マイクロタスクの)クラウドソーシング・プラットフォームは、米国のoDeskだ。
2012年で登録フリーランサーが270万人、依頼元は54万社(WikipediaのODESkの記事による)。
ベトナム最大手のマイクロタスク型のクラウドソーシング・プラットフォームのVietfreelance.vnの登録フリーランサーが2500人ほどなので、大きさが1000倍違う。私がフリーランサーなら、Vietfreelance.vnではなくoDESKに登録する。
oDESKのベトナム人
さて、そんなネット時代のグローバリズムの権化のようなoDESKであるが、ベトナム人は実際にどうしているのだろうか。調べてみた。
さて、oDeskのベトナム人というのは概念は容易だが、定義は難しい。
ベトナム国籍所持者のことなのか。ベトナム語話者のことなのか。ベトナム国居住者のことなのか。ベトナム社会で生まれ育ったもの、ベトナム国の標準的な教育を受けたもの、ベトナムでの実務経験のあるもの。
考えだせばきりがないが、ODESKは、「ベトナム語話者」と割り切っている。
414人。
意外と少ない。
では、ベトナム関係の仕事はどれぐらいあるのか。
87件。
輪をかけて少ない。
では次に、同一労働の報酬を比較してみる。驚いたことに、VietfreelanceとoDeskはほとんど変わらない。
Vietfreelance.vn |
oDesk |
|
Translation and writing |
50.000-200.000 |
110.000-220.000 |
Web developer |
50.000 |
50.000-150.000 |
Marketing |
100.000 |
150.000-200.000 |
(単位 時間あたりベトナムドン)
Web Developerの5万ドン〜15万ドンというのは、$2.5〜$7.5ぐらい。アメリカの労働者の時給ではない。また、oDeskで日本語翻訳者を探すと、時給は$15〜$40ぐらいだった。どうやら、「ネットを使ってアメリカのサイトで仕事をすれば、アメリカ並みの賃金が手に入る」というのが、そもそも間違いであるようだ。すでに競争は世界レベルであるというべきだろう。
ベトナム人とフリーランス
クラウドソーシングはベトナム人にとって、思ったほど有益なツールではない。少なくとも、天からドルがふってくる夢の道具ではない。
そのインセンティブがないのであれば、クラウドソーシングで働くことは、単なるフリーランスということになる。
フリーランスという働き方は、ベトナム人にとってどう思われているのだろうか?
これについてちゃんとしたアンケートではなく、狭い範囲でのヒアリングに基づく情報なので、精度は低いが、「ベトナム人は安定した雇用を望む」という意見が多くきかれた。
(「あんなにJob hoppingするくせに・・・」という日系企業の反論が聞こえてきそうだが・・・)
ベトナムには労働力が多い。労働市場的には買い手市場である。この状況では、売り手側(労働者)は小資本で孤立していたら、価格減の圧力に各個撃破されてしまう。
その結果が、oDeskやvietfreelanceの価格帯だ。
「それが市場というものだ」と冷酷に言ってのけるのもありだが、そんな市場に参加しない自由もあるわけで、それが、oDeskとVietfreelanceの、登録数の低調さに反映されているのだと私は思う。
ベトナムにおけるクラウドソーシングはどうあるべきか?
- 労働賃金の下落を抑制する仕組みを持つ
過当競争で最低価格まで落ちた挙句に市場参加者が減ったのでは、市場の意味がない。まさに「市場の失敗」である。 - 個人ではない労働主体にも対応
ベトナム人にはフリーランスで働くというインセンティブが低い。ならば、労働者として登録するのは、会社の方が適切かもしれない。そうなると、クラウドソーシングというよりも、単なるオフショア斡旋のようであるが、別にそう出会ってはいけない理由もないだろう。
また、個人ではない労働主体として「会社」といったが、これは排他的に言ったのではなく、グループであったりというように、もっと柔軟に考えるべきだろう。 - より現地のニーズにあった決済方法
e-Commerceの記事で見たとおり、ベトナムの通販はCOD(Cash On Delivery)が基本である。通販に限らず、企業間取引でも現金決済の傾向が強い。
しかし、クラウドソーシングのサービス市場はCODができない。先払いか後払いになる。
oDeskや日本のLancersなどではデポジットをプラットフォームが預かる形にしているが、それだけで済むのか。
以上の問題を解決したものでないと行けないだろう。
これは、サービスの社会的デザインであり、グローバライゼーションの時代にどうしても必要なものだ。
それを欠いたままグローバル・スタンダードを持ってくるのは、暴力的な市場主義に過ぎないというように思う。
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