知られざるベトナムのネット通販について細かく語る(2) – 前提としてのネット通販以前
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ベトナムのe-Commerceの状況について、実際に各店舗で購入してみてその利用感を分析してみるのだが、そこに行く前に、ネット通販と言えるかどうか微妙な買い物をしてみた。
タブレットスタンドを買ってみる
ベトナムネット通販最大手はGoogle!?
前の記事では、ベトナムのe-Commerce市場の概観を述べた。今回はベトナムのネット通販について、実際に購入して調べて見る前に、「ネット」「通販」と言えるかどうか微妙なあたりについて、議論の前提としてレポートしておきたい。
というのも、消費者側から見た時に、最も一般的なネット通販を聞いてみると、「Googleで検索する」だったからだ。
私は、Amazonに似ているlazada.vnや、楽天市場のようなchodientu.vnといった答えを期待していた。つまり、有名なブランドについて知ろうとした。しかし、そういうことではないようだ。
なにか欲しいものがあったら、Googleで検索する。ショップ名を見て、名前を知っているところを探す。値段をみていく。そして電話をかけて在庫や配達状況などを聞いて発注する。こういうユーザシナリオだった。(サンプル数が少ないので偏りがあるかもしれないことをお断りしておきます。)
Googleで蕎麦屋を探して電話で出前を頼んだら、それはネット通販というのか?
「果たしてこれはネット通販なのだろうか?」とは思った。入り口がGoogleであるだけで、その先の流れは蕎麦屋の配達と大差ない。しかし、発注や決済がweb上でできることがネット通販の本質なのか? と言われると、それは違うようにも思う。
本質論にこだわってみても仕方ないので、まずはこれを、初期条件として体験して見ることにした。
検索からデリバリまでのユーザシナリオ
買うべきものは、タブレットスタンドに決めた。先日なくしてしまい、ないと地味に困るものだった。こちらのリアルショップではここまで細かいアクセサリ類は売っていない。探しまわればどこかにあるのかもしれないが、そこまでするほどのものでもない。これは、ネットで買うのにちょうどよい頃合いのものだ。
Google画像検索で欲しいものを探す
「スタンド」のベトナム語である「giá đỡ」をGoogleの検索窓に入れ、画像検索で目視してほしいものを探す。絵画用のイーゼルや、ベッドで使うためのアーム状の巨大なものも検索されるからだ。
タブレットスタンドを見つけたら、マウスオーバーで画像掲載元のドメインを確かめる。lazada.vnやhotdeal.vnなどのネット通販だったら、売っているという事なので、そのページを表示して値段を確認する。
この作業を繰り返して、目星をつけるというか、候補を絞り込んでいく。
電話をかけて在庫確認
その次は、実際に電話をかける。なぜかというと、在庫がない場合が多いからだ。実際今回も、候補3件中2件で在庫切れだった。
タブレットスタンドなど機能やデザインにこだわるほどのものではないが、こだわりたい時は、ここで入荷予定を聞いたりして交渉することになる。
また、後述するが、配達はバイクなので、物理的に近所でなければいけない。上段では省略したが、検索の時点でホーチミン市で絞り込んでいる。ホーチミンやハノイといった大都市に住んでいるわけではない人は、ここで配達可否や値段や日数を確認する。
私たちは、thegioididong.comという店に決めた。決めた理由は、
- 商品の在庫があるのが、この店だけだった。
- 市内にリアル店舗のある有名店だから安心
ということである。実際、thegioididong.comはどこにでもあるスマホショップチェーンで、日本のdocomoショップよりも密度が高いと思う。品揃えも悪くなくて、どうしてここまでスマホが売れるのかが不思議に思うほどだ。「旺盛な消費意欲」の象徴のようなチェーンである。
通販部門は、リアル店舗とは別系列みたいで、ホーチミン市内に配送センターがあり、そこに直接オーダーしている。日本の電器店チェーンであるような、各店舗の在庫を検索とか、各店舗で取り置き(と支払い)といったものではなかった。
普通のお兄ちゃんがバイクで配達&決済
配達は翌日という事だった。・・・のだけど、翌日配達されなかった。
後日もう一度電話をしてみると「忘れていた」ということだったので、再送を依頼すると、数時間後に持ってきた。
聞いてみると、電話で注文を受けたときに、カーボン複写の伝票を発行して処理するのだが、それがどこかで滞っていたらしい。後日の電話の段階で「色は白がいいか黒がいいか」と聞いてきたので、おそらく発注伝票段階で止まっていたのだろう。
配達は制服を着ているわけでもない普通のお兄ちゃん。その場でを商品の箱を開封し、タブレットスタンドの中身を見せて、これで良いかと確認。私がOKをだすと、キャッシュ・オン・デリバリー(COD)で支払い。事前に「領収書を発行してくれ」と依頼していたが、通じていなかったようで、持ってきていなかった。
ものそのものの値段と品質は妥当
値段であるが、約$12だった。安くも高くもない、という感じ。感覚的には、日本で買うよりもやや割高かな? というぐらいだけど、おそらく中国製だし、ベトナムだからといって値段が安くなる理由のないものなので、妥当だろう。なお、型番(DA-108)で検索してみたら、中国のaribaba.comで卸値$3〜$4と書いてあった。
物じたいは、色違いというわけでもないし、故障するようなものですらないので、普通に快適に使えている。購入するまでの過程は面倒だったが、それは私がベトナム語や商習慣を知らないからいちいち大変だっただけで、こんなものを探すために市内のショップを回る手間と比べれば、十分に満足している。
今回のユーザシナリオの反省会
今回のこれはアリかナシか
- 電話をかけて在庫を探すのが面倒。
- 結局、デザインと値段の選択肢は狭かった。
- 電話で督促しなかったらたぶん忘れられてた。
- もっと高額のものをこのやり方で買うのは嫌だ。
- あの受け取りは、女性は嫌だろうな。
- 女性でなくても、見ず知らずの人間を玄関に入れて、高額の現金の入っている財布を見せるというのは抵抗がある。
というように、ケチをつけようと思えば付けられるわけだが、今のままでも問題視するほどのものでもないとも思う。これらを技術的にクリアした実例を知らないわけではないが、消費者はこれで満足しているわけだし、大切なことは商売であって、技術ではないのだから。
e-Commerceの本質
今回の調査を始めるにあたって、最初にネット通販の本質なんかが気になったのは、自分にとっても意外だった。なぜ自分はそんなことを気にするのだろうかと訝しんだ。
それは、この調査をしてみて、明らかになった。
ネット通販の本質とは、上記のような現行の商取引の問題に対してソリューションを提供することだ。
しかし、そのソリューションが適正かどうかは別問題だ。
意気込んで作ってみたら誰も欲しがっていないものであったり(ソーシャルコマースとか)、別方向に発展してしまったり(グルーポンとか)、あるクラスタのニーズを満たしたら別のクラスタから嫌われたり(楽天市場のデザインとか)、そういう死屍累々というかトライ&エラーというか、そういったものをe-Commerce界隈ではずっと見てきた。本質が技術ではなく商売である以上、このような決定打のない奮闘努力はずっと続いていくだろう。だって別の言い方をすれば、商売の工夫そのものなのだから、工夫に終わりがあるわけがない。
次回以降は、前の記事で紹介した、既存のe-Commerceを実際に使ってみて、どの問題をどのように解決しようとしたのか、そしてそれは成功したか失敗したかを分析していこうと思う。
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