消費市場としての東南アジアで必要なSCM

Publish: : 日本語 / Japanese

20年ぶりの東南アジア回帰

日本の通信販売やEコマースや小売などのサービス業において、東南アジアへの注目度が高まっている。
これは、ASEAN経済共同体(AEC)への期待によるもので、人口6億4000万人の、経済成長し、中産階級が育っており、そして文化的に馴染み深い市場が誕生するというものである。

むろん、日本企業にとって東南アジアは初めて接触する市場ではない。むしろ主な海外市場だった。しかし90年代のアジア経済危機以降、その注目は中国に大きく寄った。その注目が回帰したわけだ。(なぜ回帰したのかの国際政治的、世界経済的説明は、ここでは触れない。)
回帰してみると、日本企業にとってやや困ったことがあった。自分自身の「東南アジアのイメージ」が古いのだ。なにせ20年ぶりのごぶさたである。この20年の間に東南アジアも変わったし、日本も変わった。
具体的に言うと、製造業の生産拠点進出のイメージやノウハウはあるが、サービス業のそれがない。日本人駐在員向けにやっている「トウキョウ」だのといった名前の日本食店はイメージできても、中産階級に育ちつつある現地の消費者がどんなこと思ってどんな店で買い物しているのか分かっていない。20年ずれている(その隙間は韓国企業が埋めていて、現地に来て韓流のプレゼンスの大きさに愕然とするのである。)
今回は、それをSCMの観点から明らかにしようと思う。

OSとしてのSCM

あらためて東南アジア市場に向かい合ってみると、よくわからないのが流通だ。どの国もモノは豊富で、消費活動も活発であることは、一目見れば分かる。しかしそれがどのようにして流通しているかは、見てもよく分からない。

今どきさすがに、「MADE IN JAPANを輸出すれば、その高品質さが喜ばれて、現地人はありがたがって買うだろう」などという傲慢で楽観的な日本企業はないだろう(ないと信じたい。)しかし、製品やサービスの総合的な質感の高さや細かさにはまだ自信を持っており、少なくともそこで勝負をしないといけないとは思っているだろう。

このような高い質感を実現するには、高度なSCM(Supply Chain Management)が欠かせない。モノそのものの質感だけではなく、納期や品揃えやアフターケアまで含めた高品質を維持しなければいけないからだ。(その意味では、もはや製造業もサービス業のようなものである。)
各企業の製品をアプリケーションとするのならば、高度なSCMはOSである。
そのレベルのSCMが東南アジアにはあるのか? ないのか? それがわからないのである。

3つのSCM

SCMは、ジャーゴンの(非常に)多いIT業界において、きちんと定着した用語である。しかし、具体的に指し示す内容は、話者により3つに分かれる。

  1. ERPの一部門としてのSCM
    主に財務的な観点から、在庫量の最適化を目指すもの。目指すものはトヨタのJust-In-Timeの実現。
  2. ロジスティクス
    バーコードPOSやトラックの手配など、具体的にどうやってモノを動かすか。
  3. SRM (Supplier Relationship Management )
    調達において、下請け孫請けまで含めてどうやって品質を維持するかというもの。さらにこれには、かつてナイキが児童労働を許容して批判されたような、CSR的な観点も含む。

互いに全く関係がないわけではなく、重複する部分も多いのだが、こうして並べてみるとかなり幅が広い。ERPとCSRの両方を含む概念など、はたして一つの用語として適切なのか不思議になってくる。(それゆえに、OSといえる存在なのかもしれないが。)

「東南アジアのSCM」といっても、SCMが多義的な上に、東南アジアもかなり多様であり、一言で言うことは難しい。次ページ以降では、ベトナムを舞台とし、この3分類に分けて概況を述べる。

Related articles

mzl.lmunbbgk

世界中の音楽をストレスフリーで楽しめる「Zing Mp3」

リード文 ベトナム発、今話題のZing Mp3アプリ。ベトナムの曲だけでなく世界中の音楽が、いつでも

Read this article

images

カラオケと人気があるカラオケの歌

忙しい日々の生活の中で、音楽はひとりひとりの人間にとって、とても大切なものであると言えます。 エンタ

Read this article

image03

急成長を続けるオンラインショッピング。その魅力と問題点

インターネットデバイスの普及に伴って、人気上昇のオンラインショッピング。店に出向かずに商品が購入でき

Read this article

no image

友人と食べるとおいしいベトナムの鍋

季節の風が作業室のカーテンをはためかせ、少し肌寒く感じる。リマインダーベルが突然電話を鳴らし、会社で

Read this article

ベトナムでシェアを拡大するOTTアプリケーション、ベスト5の比較

Zalo - 音声メッセージング戦略。 ベトナム発のアプリ「Zalo」は、現在ユーザーが2000万

Read this article

no image

バッテリの寿命を延ばしてくれるiPhone版節電アプリ

売上、評判ともに絶好調のiPhoneシリーズ。仕事やエンターテイメントにおいて大きく貢献し、またたく

Read this article

vietnammarket

知られざるベトナムのネット通販について細かく語る(1)

ベトナムのネット通販市場はどのようになっていて、なにがあってなにがなくて、どんな有名どころがいて、足

Read this article

no image

ベトナムに大企業ブランドのロークラススマートフォン、人気ベスト5

ローエンド(低価格、高性能)とされる携帯電話は、数年前からベトナム国内や中国のブランドだけが発売され

Read this article

10020905025_6eb2ecb9e9_z

ベトナムのITについて調べたら、スマートフォンだけになった

IT分野について、ベトナムではどのようなことがほっとトピックなのかを調べてみた。 まず、Googl

Read this article

image00 (2)

Low end smartphoneの性能を向上してくれるスマホアプリ

2013年、モバイル時代における重要なマイルストーンを記録。この結果を残したのは、技術革新を起こした

Read this article

PAGE TOP ↑